◎相続・遺言

Q.1 遺言を書きたいのですが、どんな書き方でも良いのですか?

A.

通常、人が死亡すると、その人の遺産は法定相続人(民法に定められた一定の範囲親族)が 相続するのが一般的ですが、自己の死後、特定の人に遺産を相続させたい場合、あるいは、 誰がどんな割合で遺産を相続するかを指定して、万一、相続人の間で相続争いが起こらない ように備えたい場合など、自己の意思を文書にして遺言を作成しておきます。
但し、民法により定められた方式で書かれていなければ、法的に効力のある(有効な)遺言書とはいえない(民法第960条)ので、注意を要します。  

Q.2 高齢で認知症の疑いがあるのですが、遺言書を作成できますか?

A.

満15歳になれば、誰でも人の同意を得ずとも遺言をすることができます(民法第961条、 第962条)。しかし、遺言をする時において、「事理弁識能力」が必要とされ(民法第963 条)、その判断は非常に難しく、後々トラブルに発展する場合もありますので、事前に法律の専門家に相談されることをお勧めいたします(参考:民法第973条)。

Q.3 夫婦二人で、死後お互いにすべての財産を残す、との1通の遺言を書こうと思っていますが可能ですか?

A.

遺言は、ひとりひとりの意思によって個別に作成される必要があるので、二人以上の者が同一の証書ですることができません(民法第975条)。夫婦であっても共同で一つの遺言はできません。       

Q.4 遺言にはどんな種類があるのですか?

A.

民法で定められた遺言で、普通方式の遺言には次の3種類があり、よく利用されるのは(1)自筆証書遺言と(2)公正証書遺言です。 どの方式であっても、それぞれ民法で定め られた形式を守らないと無効となります。
1.自筆証書遺言(民法第968条)(Q7・Q8参照)
2.公正証書遺言(民法第969条)(Q9〜Q11参照)
3.秘密証書遺言(民法第970条)

(参考)特別方式の遺言は、以下の方式があります。

  1. 危急時遺言:疾病などで死亡の危急が迫っているため署名などできない者が遺言をしようとするとき、その趣旨を口頭で伝え証人が書きとめる方式。三人以上の証人の立会いが必要(民法第976条)。
  2. 隔絶地遺言:伝染病のため行政処分によって交通を断たれた場所にいる者が遺言書を作る場合、警察官一人と証人一人以上の立会いが必要(民法第977条)。
  3. 船舶中遺言:船舶中にある者が遺言書を作る場合、船長又は事務員一人及び証人二人以上の立会いが必要。船長又は事務員一人及び二人以上証人の立会いが必要(民法第978条)。
  4. 船舶遭難者の遺言:船舶が遭難した場合において、当該船舶中に在って死亡の危急に迫った者は、口頭で遺言をすることができる。船長又は事務員一人及び二人以上証人の立会いが必要(民法第979条)。

 Q.5 遺言には何を書いてもいいのですか?

A.

民法上は以下の事項について書くことが出来ます。これ以外の事項を書いても良いです が、法的な拘束力はありません。

  1. 遺産相続に関する事項
    ◦推定相続人の廃除、廃除の取消し(民法第893条、第894条)
    ◦共同相続人の相続分の指定又はその委託(民法第902条)
    ◦特別受益者の受益分の持ち戻し免除(民法903条第3項)
    ◦遺産分割の方法の指定又はその委託、遺産分割の禁止(民法第908条)
    ◦共同相続人の担保責任の定め(民法第914条)
    ◦遺言執行者の指定又は指定の委託(民法第1006条1項)
  2. 財産処分に関する事項
    ◦包括遺贈・特定遺贈(民法964条)
    ◦遺留分減殺方法の指定(民法第1034条)、寄附行為(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第158条2項)信託の設定(信託法第3条2号)
  3. 身分行為
    ◦認知(民法781条2項)
    ◦未成年者の後見人の指定(民法第839条)
    ◦未成年者の後見監督人の指定(民法第848条)
  4. その他
    ◦祭祀承継者の指定(民法第897条1項)

Q.6 同居して面倒を見てくれている子により多くの財産を相続させたいと思うのですが、可能でしょうか?

A.

その旨の遺言書を書くことで可能になります。遺言によって法定相続分(Q21)とは異な る相続分を指定することができます(民法第902条、903条第3項)。但し、他の子の遺留分(Q35)額を超えた相続分を指定した場合には、その他の子らに遺留分を請求する権利が発生しますので、注意が必要です(民法第1028条)。

Q.7 自筆証書遺言の書き方は?他人の代筆や、パソコン等で作成しても良いのでしょうか?

A.

自筆証書遺言は、その全文、日付及び氏名を自筆で書いた上でし、これに印(認印でも良い)を押さなければなりません。よって他人の代筆によるものは無効です。パソコン等の使用は、遺言者の真意を判定できないので無効とされています(民法第968条第1項)。

Q.8 自筆証書遺言を書き間違えたので、訂正はできるでしょうか?

A.

遺言に変更を加える場合は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して、特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じません(民法第968条第2項)。形式に間違いがあると、変更の効力が認められない場合もありますので、間違えた場合ははじめから書き直すか、当事務所などの専門家に相談してから訂正を行ってください。

Q.9 公正証書遺言はどのように作りますか?

A.

公正証書遺言は、公証人に対して遺言者が遺言の内容を伝え(「口授(くじゅ)」といいます。)、それに基づいて公証人が、遺言者の真意を正確に文章にまとめて作成します。これを公証人が遺言者及び立ち会っている二人の証人に読み聞かせ、又は閲覧させて、内容が正確かどうか確認し、3人が署名捺印することで完成します(民法第969条)。公証人は全国各地にある公証役場で執務しています。

(参考)口がきけない方、耳が聞こえない方が遺言書を作成する場合 
平成11年の民法改正により第969条の2が追加され、口がきけない方が遺言書を作成する場合、通訳人の通訳による遺言者の申述又は自書を、上述の「口授」に代えなければならないことになりました。耳の聞こえない方に対しても、公証人は、筆記した内容を遺言者に伝えて、上述の「読み聞かせ」に代えることができます。

Q.10 遺言者が寝たきり等で公正証書遺言を作成するために公証役場まで出向けない場合は、どうしたらよいでしょう?

A.

遺言者の依頼によって、公証人に入院先の病院や自宅に出張してもらうことができます。
但し、手数料に公証人の出張経費が加算されます。

Q.11 公正証書遺言を作るには証人が二人必要と聞きましたが、どんな人がなれるのですか?適当な方が見つからない場合はどうすればいいですか?

A.

証人は、「未成年者」、「推定相続人及び受遺者と、これらの配偶者及び直系尊属」、「公証人の配偶者、四親等内の親族、書記及び使用人」以外であれば誰でもなれます(民法第974条)。
もし、上記の方が証人として署名押印した場合はその遺言書は効力がありませんので(無効)、ご注意下さい。証人が見つからない場合は、公証役場で、もしくは当事務所などの専門家に、ご相談ください。

Q.12 遺言執行者とは何でしょうか?どんな役割をしますか?

A.

遺言執行者とは、遺言者によって指定された、又は家庭裁判所によって選任された者で、遺言書の内容を実現する責務を負った者です(民法第1006条・1009条・1010条)。
職務は、遺言の内容を実現するために必要な一切の行為です(相続財産目録の作成、相続財産の管理、遺贈の履行、遺言認知の届出等)。なお、職務遂行にかかった費用、報酬等は、相続財産から支出されます。

Q.13 遺言は、一度書いたら書き直せないのですか?

A.

何度でも書き直すことができます。新しく作成した遺言で前に書いた遺言を撤回することも出来ます。また、被相続人の死後、複数の遺言書が見つかった場合、日付の最も新しいものが有効となります。
但し、後で問題が起きないように、新しい遺言書を作成した時点で、古い遺言書を破棄する方がよいでしょう(民法第1022条〜第1025条)。遺言書の作成は当事務所にご相談ください。

Q.14 本人が亡くなった後、遺言書が見つかった場合、遺族はどうすればよいのでしょうか?封がされている場合、開けて見てはだめなのでしょうか?

A.

遺言書が見つかった場合、保管者又はこれを発見した相続人は、遺言者の死亡を知った後、遅滞なく遺言書を家庭裁判所に提出して、その「検認」を請求しなければなりません。
(民法第1004条第1項)。「検認」とは遺言書の現状を確認し証拠を保全する手続きです。
但し、これを経たからといって遺言の内容が有効と確認されたものではないとされています。
封印のある遺言書は、家庭裁判所で相続人又はその代理人の立会いがなければ、開封することができないことになっています(民法第1004条第3項)。なお、公正証書遺言の場合、検認の手続は必要ありません(民法第1004条第2項)。

Q.15 「相続」とは何ですか?「被相続人」「相続人」という言葉を良く聞きますが、どういう意味ですか?

A.

「相続」とは、ある人が死亡したとき、その人の財産に属した一切の権利義務を受け継ぐことを言います。但し、その人の一身に専属したものを受け継ぐことはできません(民法第896条)。死亡した人を「被相続人」、その所有していた財産を「相続財産」、その権利義務を受け継ぐ人を「相続人」と言います。相続人となれる人は、民法により、その範囲が定められています。

Q.16 相続と遺贈の違いは何ですか?

A.

相続とは、被相続人の死亡後、相続人に対し、遺言による相続分の指定(民法第902条)、あるいはそれがなければ法定の割合(民法第900条)に基づき、被相続人の財産に属した一切の権利義務を引き継がせることを言う(民法第986条)のに対し、遺贈とは、遺贈者の遺言により、受遺者にその財産の全部又は一部を、包括的にまたは特定して贈与すること(民法第964条)を言います。
どちらも人の死亡を原因とする点(民法第882条、第985条)と、遺留分を侵害することはできない点(民法第1028条、第964条)においては同じです。
違う点は、相続における対象者は相続人ですが、遺贈の対象者は、特定されていません。従って、相続人以外の人に財産を遺したいのであれば、遺言により遺贈をすることが必要となります。

Q.17 相続人になる人は決まっているのですか?

A.

相続人となるべき方及びその順位は法律で決められています。
配偶者は、常に相続人となります(民法第980条)。内縁の妻は、対象となりません。

第1順位 子

常に相続人となります(民法第887条第1項)。養子も相続人です(民法第809条)。養子(普通養子)は、実親と養親の双方から相続を受ける権利を有します。子には、胎児を含みます(民法第886条)。嫡出でない子(婚姻関係のない父母の間に生まれた子)の相続分は、従来、嫡出子の相続分の2分の1でしたが、民法の一部改正により、嫡出子の相続分と同等になりました。平成25年9月5日以後に相続が開始した(被相続人が死亡した)事案から適用されます。
それ以前の相続で、相続人の中に嫡出子と嫡出でない子の双方がいる事案は、当事務所にご相談ください。

第2順位 直系尊属

被相続人の父母、祖父母等を言います。子がいない場合に相続人となります(民法第889条第1項)。被相続人に親等が近い者が優先します。第3順位 兄弟姉妹

子供も直系尊属もいない場合のみ相続人となります(民法第889条第1項)。

Q.18 相続人であるのに、相続ができない場合ってあるのですか?

A.

推定相続人とは、現時点で相続が発生した場合、法定相続人となり得る者のことを言い、その全員が実際に相続人になれるわけではありません。推定相続人が相続権を失うのは以下の場合です(民法第891条、第892条、第893条)。
1.相続人の死亡
2.相続欠格(Q20)
3.推定相続人の廃除(Q20)

Q.19 相続財産は負債が多いので、相続を断ることができますか?

A.

相続が始まった後、相続の放棄、すなわち相続人の意思で相続しないことができます。その場合、相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3ケ月以内に、家庭裁判所において「相続放棄の申述」の手続きを行い、審判を受ける必要があります(民法第915条、第938条)。Q27も参照ください。
なお、相続の放棄をすれば、その直系卑属に代襲相続権は発生しません。

Q.20 相続欠格、廃除とは何ですか?

A.

相続欠格とは、推定相続人について、相続をさせることが社会通念上相応しくない事情がある場合、法律上当然に相続人の資格を失わせる制度です。民法で定めるのは、故意に被相続人または相続について先順位もしくは同順位にある者を死亡させたために刑に処せられた者や、詐欺・強迫により被相続人が遺言をし、撤回し、取消し、または変更することを妨げた者、相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠 蔽した者などは、相続人となることができません(民法第891条)。
廃除とは、被相続人が推定相続人に相続をさせることを望まない時、家庭裁判所に請求してその者の相続権を失わせる制度です。推定相続人が被相続人に対して虐待・重大な侮辱を与えるか、推定相続人に著しい非行があったことが必要です(民法第892条)。 

Q.21 法定相続分とはどのようになっていますか?

A.

平成25年9月5日以降生じた相続については、法定相続分は以下の通りになります(民法第900条)。それ以前に生じた相続については、法律の専門家にご相談ください。

  1. 子及び配偶者が相続人であるときは、配偶者に2分の1、子は残りの2分の1を人数で均等に分けます。嫡出子と嫡出でない子の相続分は同等です。
  2. 配偶者及び直系尊属が相続人であるときは、配偶者に3分の2 、直系尊属は残りの3 分の1を人数で均等に分けます。
  3. 配偶者及び兄弟姉妹が相続人であるときは、配偶者に4分の3、兄弟姉妹は4分の1を人数で均等に分けます。但し、片親のみが共通(半血)である兄弟姉妹の相続分は、両親が共通(全血)である兄弟姉妹の半分です。
  4. 子のみが相続人である時は、人数で均等に分けます。嫡出子と嫡出でない子の相続分 は同等です。
  5. 直系尊属のみが相続人であるときは、人数で均等に分けます。
  6. 兄弟姉妹のみが相続人であるときは、人数で均等に分けます。但し、片親のみが共通(半血)である兄弟姉妹の相続分は両親が共通(全血)である兄弟姉妹の半分です。

 

Q.22 夫(妻)が亡くなったのですが、私はどれだけの財産を相続できるのですか?遺言書はありません。

A.

 

  1. 相続人があなただけの場合はすべての財産を相続できます。
  2. 相続人があなたと子だけの場合は、あなたがすべての財産の半分を相続できます。
  3. 相続人があなたと被相続人の直系尊属だけの場合は、あなたはすべての財産の3分の2を相続できます。
  4. 相続人があなたと被相続人の兄弟姉妹だけの場合は、あなたはすべての財産の4分の3を相続できます。

    (昭和56年1月1日以降生じた相続の場合、民法第900条)

 

Q.23 本人が死亡した時点で、すでに子が死亡しており、子の子(本人にとって孫)は相続できるのですか?

A.

相続人である子又は兄弟姉妹が相続の開始以前に死亡し、又は欠格・廃除により相続権を失った場合において、その者の子が代わって相続人になることを、代襲相続と言います(民法第887条第2項、第889条第2項)。 代襲される者を被代襲者、代襲する者を代襲者と呼びます。
相続人の直系卑属(子)の場合は、どこまでも代襲します(再代襲・再々代襲、民法第887条3項)。 兄弟姉妹の子は代襲相続できますが、その子の子までには代襲相続権はありません(民法第889条第2項)。
代襲者の相続分は、被代襲者と同じです。被代襲者が相続を放棄した時、代襲者は相続はできません。代襲者が複数の場合、被代襲者の相続分を代襲相続人の人数に応じて均等に分けます。

Q.24 相続の対象となる財産には、どのような物があるのでしょうか?

A.

被相続人の財産に属した一切の権利義務(民法第896条)をいい、積極財産としてのプラス財産(現金や不動産など)と、消極財産としてのマイナス財産、つまり債務(借金など)があります。厳密には権利義務とは言えないものであっても、財産法上の法的地位と言えるものならば相続の対象となり得ます。(例:占有者の善意悪意、保証人・物上保証人としての債務、契約申込者の地位など。)

Q.25 相続はいつ開始するのですか?相続が開始した後、死亡した人の財産はどのように管理され、処分されるのでしょうか?

A

人の死亡時から、相続は開始し(民法第882条)、相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を受け継ぎます(民法第896条)。 この場合の死亡とは、自然死、事故死の他に、失踪宣告などにより、法律上死亡したとみなされる場合も含まれます。
相続人が複数人いる時には、被相続人の相続財産(債権債務)は、遺産分割協議が行われる等によって、個々の相続人への具体的な帰属が決まるまでは共同の管理のもとに置かれます。
その間は、保存行為・変更行為・その他の管理行為ができます。管理の費用は、相続財産の中から支払います(民法第885条)。
具体的な手続きについては、Q28をご覧下さい。 

Q.26 相続の承認とは、どういう効果を持つものなのですか?

A

相続の承認とは、相続人が被相続人の権利義務を引き継ぐことを言い、単純承認、限定承 認の2種類があります。

  1. 単純承認(民法第920条)
    相続人が被相続人の権利義務をそのまま引き継ぐことです。何ら手続きは必要ありません。なお、相続人が民法で定められた行為を行った場合、自動的に単純承認したとみなされる場合がある(法定単純承認・民法921条)ので注意が必要です。
  2. 限定承認(民法第922条) 
    相続によって得た財産の限度においてのみ被相続人の債務及び遺贈を弁済すべきことを留保して相続を承認することです。家庭裁判所への申述が必要です。相続人が数人いるときは、限定承認は、共同相続人の全員が共同してのみこれをすることができます(民法第923条)。相続財産中債務が多い場合にはこの方法をとることもあります。

 

Q.27 相続の放棄とは、どういう効果を持つものなのですか?

A

相続の放棄とは、民法で決められた方式に従って行われる、相続財産を一切承継しない、すなわち相続人にならない旨の意思表示をいいます。相続の放棄をしようとする者は、原則として相続開始後3か月以内に、家庭裁判所に「相続放棄の申述」を提出し、「相続の放棄の申述の受理」という審判を受けなければなりません。(民法第938条、家事審判手続法第201条第5項及び第7項)相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなされます(民法第939条)。

Q.28 父の遺産を相続する手続きについて教えてください。

A

概ね次の手順で手続きをします。詳細は行政書士にご相談ください。

  1. 遺言が残されていないかご確認ください。遺言があれば、遺言に基づく遺言執行手続を行う必要があります。
    遺言がない場合は、次の手順に進んでください。
  2. お父様の出生から死亡までの戸籍などを調査して、相続人を特定します。
  3. 民法第900条に基づいた法定相続分の割合で相続するのか、相続人全員による遺産分割協議に基づく割合で相続するのか、相続人で決定します。
  4. 法定相続分による相続の場合は、上記2.の戸籍などの公的証明書類を添付して分割の手続きを行います。遺産分割協議による相続の場合は、上記2.の戸籍などの公的証明書類に遺産分割協議書の添付が必要です。

 

Q.29 遺産分割協議書とは何ですか?

A

遺産分割の協議が行われた後、その結果を書面にして残したものが遺産分割協議書です。必ず作成しなければならないわけではないのですが、遺産に不動産が含まれている場合は登記手続きの際、添付書面として必要になります。銀行での手続きの際にも必要な場合があります。
また、後日の紛争を避けるためにも、作成しておいた方が望ましいといえます。

Q.30 相続財産を、遺産分割する(数人の相続人で分ける)には、どのような方法がありますか?

A

遺産分割は、共同相続財産の最終的帰属を決定するための手続きで、当事者間の合意によるものと、家庭裁判所の審判による場合とがあります(民法第907条)。 協議による遺産分割は、相続人となる者全員の合意が必要です。この合意が得られない場合は、家庭裁判所に調停を求めることが出来ます。これで決着しない場合は審判へと移行します。
なお、相続人のうち、子供が胎児であるとか、未成年者である場合には、親権者と子の利益相反行為になるので、家庭裁判所に特別代理人を選任して貰わなければなりません(民法第826条)。

Q.31 特別受益の持戻しとはどういうものでしょうか?

A

特別受益の持戻しとは、相続人中に被相続人から特別の財産的利益を受けた者があるときは、遺産分割に際し、その点を考慮して相続分決め、他の相続人との間に計算上不公平が生じないようにする制度です(民法第903条、第904条)。
対象となる特別の利益とは、特定の相続人が、(1)被相続人から受けた遺贈や、(2)被相続人から生前に受けたある程度高額の財産的利益です。具体的事例としては結婚時の持参金、居住用建物の購入資金・開業資金などがあります。

Q.32 寄与分とはどういうものでしょうか?

A

寄与分とは、共同相続人中に被相続人の財産の維持又は増加について特別の「寄与」をした者があるときは、遺産分割に際し、寄与分の加算をして相続人間の実質的公平を図る制度です(民法第904条の2)。
協議による遺産分割又は家庭裁判所の審判(調停)のどちらで決めてもかまいません。
考慮の対象となる「寄与」とは、被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法によるものです。計算方法は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から共同相続人の協議で定めたその者の寄与分を控除したものを相続財産とみなし、その者の法定相続分に寄与分を加えた額をもってその者の相続分とします。

Q.33 株券を自宅や貸金庫などで保管している場合、相続手続について気をつけることは何でしょうか?

A

上場企業の株券は、2009年1月より株券電子化により法律上、株券自体は無価値となり、無効(ただの紙切れ)となっていますが株主の権利は証券会社などの金融機関の取引口座において株券電子的に管理され、これまでどおり株主の権利は守られています。
但し、株券電子化時に本人名義(相続人名義)ではなく被相続人名義のままであった場合、株券電子化に伴い、株主としての権利を保全するために株主名簿上の名義で「特別口座」が開設されますが、そのままでは株式の売買などの取引はできないので、株式の相続による名義書換の手続を行ってください。

Q.34 我々相続人以外の第三者に全財産を遺贈するとの遺言が見つかりました。今後の生活に支障が出ます。一部でも相続財産を確保できないでしょうか?

A

被相続人個人の相続財産の処分は原則として自由ですが、被相続人に依存していた一定の親族のために遺産の一部を留保させる制度が遺留分です。
死亡した人の財産に対する遺族の期待を保護する制度として遺留分があります。遺留分とは、個人の財産処分の自由を一定程度制限し、遺族のため、財産の一部を保留させる制度です。
例えば被相続人が、相続人以外の第三者に全財産を遺贈した場合、相続人は一定の範囲で財産を取り戻す権利(遺留分減殺請求権・民法1031条・Q35)を当然に得ることになります。
また、被相続人が一部の相続人に相続財産の全部または大部分を遺贈した場合は、他の相続人は遺留分を主張できる場合があります。

遺留分権利者: 兄弟姉妹以外の相続人、すなわち、配偶者、子、直系尊属です(民法第1028条)。子の代襲相続人も含まれます。 
遺留分の割合: 直系尊属のみが相続人であるときは被相続人の財産の3分の1、その他の場合には2分の1(民法第1028条)。遺留分権利者が複数の場合は、これに法定相続分を乗じたものが各人の遺留分になります。 

Q.35 遺留分減殺請求権(いりゅうぶんげんさいせいきゅうけん)とは何でしょうか?

A

遺留分の侵害を回復するための権利です(民法第1031条)。相続によって受ける利益の価額が遺留分額を下まわる場合に、その差額を限度として成立します。
行使の相手方には、受遺者・受贈者たる相続人のほか、他の相続人の遺留分を侵害する相続分指定を受けた相続人も含まれます。
この権利は権利者ごとに行使するかどうか個別に決めることができます。減殺する旨の意思表示だけでよく、裁判による必要はありません。減殺請求権を行使すべき期間は限られており、遺留分権利者が相続の開始および減殺すべき遺贈又は贈与のあったことを知った時から1年(時効期間)、相続開始の時から10年(除斥期間) が経過すると請求できなくなります。

Q.36 亡くなった人の名義の借家にその相続人が住むことはできるのでしょうか?

A

家を借りその家を利用する権利を賃借権といいますが、この権利は相続財産ですので、相続人が相続放棄等をせずに相続されているのでしたら、たとえ家主から出て行くよう申し出があったとしても相続した賃借権を持って対抗できます。

Q.37 内縁の夫(妻)が死亡した場合、残された者はそのまま亡くなった人の名義の不動産に住む事は出来るのでしょうか?

A

◇相続人がいる場合

  1. 判例は「賃借権自体は相続財産であるので内縁の妻には承継されないが、内縁の妻等は相続人の承継した賃借権を援用する形で居住権を主張できる」としています。
  2. 相続人が「賃借権を持っているのは相続人である私であり、内縁者であるあなたに賃借権はないのだから家を明け渡してくれないか?」ということを言ってくることも十分に考えられます。この点、判例は賃借権を持つ相続人が家を利用するにつき特別な事由があることを要求しています。つまり特別な事由がないのに明け渡せということは権利の濫用(自分の持つ権利を本来の目的から外れた形で用いること)に当たるとし、認められないということです。

◇相続人がいない場合

賃借人に相続人がいない場合には、内縁者に賃借権を承継させるという規定が借地借家法にあります(借地借家法第36条)。この条文の趣旨は、もし被相続人に相続人がいない場合にはそれまで生活を共にしてきた内縁者に特別に承継させようというものです。

~出典「大阪府行政書士会HP」