◎知的資産経営

Q.1 企業・団体・自治体等(以下「企業等」と表示)にとって「知的資産」とは何ですか?

A

企業等の競争力の源泉となる「その企業等独自の魅力や強み(無形の資産)」をいいますが、具体的には、以下のものがあります。わかりやすいように3つに分けてご紹介していますが、3つすべてをまとめた概念が「知的資産」です。

知的資産

経営理念、人材、技術力、品質のこだわり、商品・サービスのこだわり、ネットワークの強み、社員教育システム、仕入れの強み、販売チャネルの強み等

知的財産

発明・考案・著作物・新品種その他の知的創作、ブランドや商号に蓄積された信用、営業秘密、ビジネスモデル等

知的財産権
(権利化されたもの)

産業財産権(特許権、実用新案権、意匠権、商標権)、著作権、育成者権、半導体回路配置利用権等

 

Q.2 「知的資産経営」とは、どういうものですか?

A

「知的資産経営」とは、財務諸表(PL、BS等)には表れない「企業等の無形の魅力、強み(知的資産)」を把握し、利害関係者であるステークホルダー(取引先、金融機関、株主、顧客、従業員、就職希望者等)に見える形で開示、もしくはステークホルダー向けに活用し、ステークホルダーからの信頼を得て経営の発展に役立てる経営のことです。

企業、特に中小企業の競争力は、財務データのように表面に見えるものだけでなく、その会社が有している「無形の魅力、強み(知的資産)」が縁の下の力持ちのように支えていることが多いのです。
しかし、企業が有している知的資産のなかでも、権利化された知的財産権以外の知的資産は、外部からは見えにくく、内部からもその存在が意識されず、これを積極的に経営資源として活用しなければ、「宝の持ち腐れ」になってしまいます。

そこで、そういう知的資産を積極的に外部に見える形にして、意識的に経営資源として活用する経営方法を「知的資産経営」と呼んでいます。
「知的資産経営」は、いまある「無形の魅力、強み(知的資産)」を意識し、活用するものですから、今日からでも取組むことができるものです。
ですから、「知的資産経営」は、特に中小企業に適した経営手法であるといえます。

Q.3 「知的資産」は、どの中小企業にもいくつかはありそうですね。そうすると「知的資産経営」は、どの中小企業も無意識に取り組んでいるということですか?

A

Q1、Q2でご説明しましたように、少なくとも何らかの「知的資産」は、どの中小企業にもあるということができます。ところが、「知的資産」を保有する中小企業がすべて「知的資産経営」を行っているかといえば、必ずしもそうではありません。

まず、知的資産の存在を意識し、それを積極的に経営資源として活用することが必要です。そのためには知的資産を外部(ステークホルダー)に見える形にして開示します。

すなわち、知的資産を保有していても、「無形の魅力、強み」を何らかの形で活用し、ステークホルダーからの信頼を得て経営の発展に役立てることができていないときには、知的資産経営を行っているということはできません。言い換えれば、知的資産をその企業の価値創造につなげているときに知的資産経営を実践しているということになります。

Q.4 中小企業が知的資産経営を行う目的が、「中小企業の『無形の魅力、強み』を開示し、ステークホルダーからの信頼を得て経営の発展に役立てること」であるならば、その効果やメリットは何ですか?

A

以下のような経営の発展に役立つ効果・メリットが期待されます。

・企業価値が外部から見えやすくなり、企業価値が高まる。
・新たな販売先の獲得
・技術力が評価され、開発依頼、業務提携の拡大
・金融機関関係先の評価を得た資金調達の円滑化
・経営理念の従業員への浸透、社員教育への活用
・リクルーティングへの活用(わかりやすい魅力と強みの開示)
・事業承継への活用

Q.5 「知的資産経営報告書」とは、どのようなものですか?

A

知的資産経営を開示するためのツールです。
経営理念、業務概要、沿革の他に無形の強みや魅力の内容、過去から現在までの知的資産を活用した活動内容、現在から未来に向けた知的資産を活用した事業計画が開示されることが多いです。また、強みや魅力を今後いかに伸ばすのか、経営課題の解決や克服にいかに取り組むか等も必要に応じて開示されます。

近年、政府の中小企業支援政策として「知的資産経営」の導入が積極的に推進され、「知的資産経営報告書」を作成し公表する企業が増えつつあります。しかし、まだ全国的に普及するまでには至っていません。今、知的資産経営報告書を開示している中小企業は、それだけ先進的・積極的な経営姿勢の企業として高く評価されています。

参考(経済産業省「知的資産経営ポータル」)

Q.6 「知的資産経営報告書」を当該中小企業が自ら作成する場合と行政書士等の作成支援者に協力を依頼する場合とを比較したときに、どのような違いがありますか?

A

本来、知的資産経営報告書は企業の知的資産経営の成果を開示するものですから、その企業自ら作成することが望ましいといえます。
しかし、行政書士等の外部専門家が、作成支援者として関与したときには、以下のようなメリットがあります。

・経営者が気づかない知的資産の抽出
・第三者の視点による客観性公平性の確保
・文書化の専門家が提供する分かりやすさ
・論理性、ストーリー性の確保
・信頼性につながるKPIの掘り起こし
・人的資産の構造資産化の支援
 (人的資産:個人の優れた能力等をいいますが、退職時には持ち出されます。)
 (構造資産又は組織資産:組織や会社に属する資産、退職しても会社に残ります。)
・公開性と秘密性に関する提案
・営業秘密保護に関する具体的提案
 (不正競争防止法による保護、公証制度の活用等)
・今後の経営課題を明らかにし、検証・改善のご支援
・共感を生む報告書、感動が伝わる報告書となるような工夫

※KPI(Key Performance Indicators):主要な業績評価の指標
 販売、財務、サービス、技術等のレベルを示すための指標
 処理時間、稼働率、業務の効率、品質を客観的に表現する数値化された指標等

Q.7 「知的資産経営報告書」作成支援以外に行政書士が関与する「知的資産関連業務」にはどのようなものがありますか?

A

・企業価値の創造支援その他知的資産経営コンサルティング
・有用な技術情報・業務手順の文書化及び秘密管理、社員教育サポ−ト
・特許規程・職務発明規程、著作権規程、営業秘密管理規程等作成
・研究開発・実用化開発・事業開発のための事業計画書作成
・知的財産権譲渡契約書、知財ライセンス契約書、商品化権契約書、共同開発契約書、秘密保持契約書、業務提携・販売提携契約書、フランチャイズ契約書等
・著作権登録申請代理(著作権譲渡の登録、第一公表日・発行日登録、実名登録、プログラムの創作年月日登録等)
・産業財産権に係る移転、表示変更登録申請代理
・特許・実用新案・意匠権に係る専用実施権登録、商標権に係る専用・通常使用権登録申請代理
・電子公証を利用した先発明・先使用の証明、ノウハウの秘密管理等
・植物新品種登録申請代理(品種登録、移転登録、利用権登録等)
・半導体回路配置利用権登録申請代理
・知的財産権に関連する警告書・通知書等(内容証明嘱託代理含む)

~出典「大阪府行政書士会HP」